欧州企業は四半期報告を廃止すべきか?

投稿日: 2016年3月2日

2016年1月22日

執筆:ローリー・ハヴロック

中間財務報告書を廃止したIR責任者(IRO)はその決定の実態について論じている。

2015年11月が早くも終わってしまった。欧州の発行体はもはや四半期報告書の作成に対して恩義を受けていない。しかし、四半期報告書廃止を決定した企業はまだメディアで大きく取り上げられていない。

大半の企業はどちらを選択するかまだ決めていない。英国企業は他に1年先んじてスタートを切ったが、多くの欧州企業は米国株主の比率が大きく、彼らは依然として四半期報告書の更新を期待している。より複雑な企業(特に金融系)は定期的に株主に最新情報を提供し続けることを望んでいる。

2015年1月に四半期報告を廃止したナショナル・グリッドのIR担当ディレクターのアパルティ・シンハル氏は、この決断を迫られている企業にとって、これは企業が存在する環境や報告書作成のタイムスケールを見直すケースだという。「四半期ベースで、四半期ごとに業績や見通しが変わるか否かを問わずに報告するには、どの程度の開示や更新を行えば、企業の業績を追跡する上で役立つか、投資家のリードに任せるのが最良である」

シンハル氏は、ナショナル・グリッドの収益の大半は、統制されており、同社の財務パフォーマンスは四半期ごとに大きく変わることはなく、同社の中間経営報告は規制に関するチェックリストをチェックして作られたものになるリスクがあるという。シンハル氏が率いるチームでは、IRニューズレターを用いて、そのような情報の更新を行っており、適切な時には(四半期より短い期間で)いつでも配布されている。

「当然ながら、中間決算や年次決算の間に更新する場合には、当社は積極的に、タイムリーな形で、更新義務を果たすよう努めている。当社はまた単に法的要件を満たすだけでなく、投資家が有用と考えると思われる情報を提供するように心がけている。そのような情報の共有は厳格な時間枠に左右されないことが好ましい。飲料メーカーのディアジオでIRヘッドを務めるキャサリン・ジェームズ氏も同様の見解を示している。同社は2015年4月に四半期報告書を発表した後、半期決算体制に移行した。ジェームズ氏は、同社の顧客は毎週商品を購入するわけでなく、通常の購買パターンと異なるため、四半期報告は実情に即さないという。

「一つの課題は、四半期動向は年次動向と必ずしも同じではないこと、投資家はそれぞれから同じ情報を推定することができるかどうか、あるいはいずれかが適切であるかどうかを説明するためにわれわれが時間を費やしていることである。これは、投資家の見解が伝わることがなく、われわれにとっても有用ではない、繰り返される会話である」とジェームズ氏は続ける。

ジェームズ氏はシンハル氏の主張に追加して、投資家へのコミュニケーションは四半期報告の更新に始まり、四半期報告の更新で終わるわけでなく、ディアジオでは、毎年社長との電話会議を年5回開催しているほか、「非常に充実した更新プログラム」を実践しているという。「IRが投資家との対話の代替ルーを多く持たないのであれば、企業は四半期報告を廃止すべきでないと主張しているわけではない」。

企業は四半期報告を廃止するのが適切だろうか。結局は投資家やアナリストにとって有用であることが分かる、自問すべき根本的な質問が存在するとシンハル氏はいう「市況産業の場合で、売上高や客数などについて定期的に更新ができる場合には、一定の価値が見いだせるだろう」

ジェームズ氏は、IR責任者は実際に何を廃止しようとしているのか尋ねるべきだと提言する。「四半期報告と並んで年次報告を作成しているにすぎない場合は、四半期報告を廃止した場合、投資家との接点が大きく失われることになろう。これは非常に危険なことである」と指摘する。

ジェームズ氏は、さまざまな投資家が変化についてどのように考えているかチェックすることが、最良の手だという。例えば、会議や面談などで対面する大規模投資家よりも、発行体との対面頻度が少ない小規模株主にとって、より有用となる傾向がある。「当社は投資家と対話し、四半期報告の廃止は彼らにとって容認できるかどうかチェックした。彼らが「ノー」と答えたとしても、おそらくは別の決定に関するものであったろう、と総括する。