アクティビストとどう向き合うか

投稿日: 2016年2月26日

1) 無理難題を押し付ける厄介者?

「アクティビスト投資家」

この言葉を一言聞いただけで、嫌悪感を示すオフィサーの方も多いのではないでしょうか?

一般的なアクティビストのイメージとしては、高い株式の保有率を背景に、企業に対し経営陣の交代や自社株買い、配当政策の変更等の企業経営改善の提案を積極的に行い、投資先企業の企業価値を向上させようとする投資家、というものが多いかと思います。事実、いわゆるアクティビスト達は、こうしたアプローチによって、日々利益を上げています。今回は、すっかり上場企業の嫌われ者となってしまったアクティビストに対する姿勢について検討してみたいと思います。

2) 米国におけるアクティビスト対策の一例

アクティビストに付きまとうマイナスイメージは、投資大国である米国においても変わらないようです。投資家との円滑なコミュニケーションの発展に関する研究を行っているsharonmerrill社では、“アクティビスト以外の機関投資家との良好な関係の構築が、アクティビスト投資家に関するリスクを低減する”という内容のレポートを掲載しています*¹。

同レポートでは、近年、アクティビスト達は新しい動きを見せているとしています。

従来彼らは高い保有率に基づく独立的な経営改善要求を主に行ってきましたが、最近は自らは低い保有率でも、自分たち以外の別の機関投資家を見方に取り組むことで、結果として大多数の賛成意見を形成し、提案を受け入れさせているというのです。従来の手法では、大量保有をすることで、自分たちの行動が第三者に把握されるというリスクや、売り払いたいときに売り払えない、いわゆる流動性リスクを低減することもできることが背景にあると考えられます。こうしたアクティビストの新たな戦略に対し、同レポートでは、対策として重要なのは、買収防衛策を発表する等、アクティビストと真正面から対峙するのではなく、彼ら以外の一般機関投資家との関係性を良好なものすることだとしています。いわば攻撃は最大の防御、アクティビスト達に機関投資家を囲いこまれてしまう前に、企業側が彼らを取込み、アクティビスト達の提案に同意しない環境を作り出してしまおう、つまりは相手の戦略を企業側が利用する、ということです。そのために最も重要なのは、一般機関投資家たちにとって訴求力のある成長ストーリーを構築し、なおかつ的確に伝えることだとしています。訴求力のあるストーリーがあり、効果的に伝えられれば、一般機関投資家は、アクティビスト達の提案にも賛同しにくくなる、という理由です。

3) 黒船は近づいている

とはいえ、こうした事情は米国等の海外のものであり、日本でもかつて村上ファンドのような事件はあったけれど、法整備も進んでいるから、まだまだ心配には及ぶまい。加えて、元来日本の機関投資家はパッシブな運用を旨としており、こうした文化は根付かないだろう。しかし、従来のそうした楽観的な考え方は、近年通用しなくなっているかもしれません。

ご承知の通り、金融庁の主導により、2014年2月にはスチュワードシップ・コードが、2015年6月にはコーポレートガバナンス・コードがそれぞれ策定されました。両コードは、肯定的な見方をすれば投資家との建設的な対話を促進することが目的ですが、裏を返せば投資家の対話の求めには積極的に応じなければならないことを求めています。これはアクティビスト投資家についても例外ではありません。また、今や日本企業株式の30%を海外投資家が保有する時代です。不慣れな日本語に悪戦苦闘している海外の一般投資家が、英語等の同じ言語でアクティビストから自分たちの提案が如何に企業価値を向上させるかを力説された時、彼らは耳を傾けずにいられるでしょうか。アクティビスト達が日本へと乗り込んでくるための下地は着々と整っているのです。アクティビスト達がまず目をつけてくるのは、確かな成長性がある一方、株価が低く市場で評価されていなかったり、キャッシュポジションが高い企業です。こうした特徴を有しやすいいわゆる中小上場企業については、油断していればあっという間に寝首を掻かれてしまうリスクがあるのです。まさにこれから成長しようというタイミングで彼らの要求に従わざるを得なくなるのは、企業として大きなマイナスとなります。上記のようなリスクを抱えている企業については、今のうちに自社の株式や財務に関するリスクを再検討し、必要な対策を講じる必要があるでしょう。

4) 果たして本当に悪役なのか

ここまでアクティビストを目の敵にしたような内容を書き連ねてきましたが、果たして彼らはそれほどまでに企業にマイナスの影響を及ぼす存在なのでしょうか?

彼らの介入がなくとも、

株価は上昇するでしょうか?

蓄積していた内部留保を効果的に利用することはできるでしょうか?

市場での自社の認知度は上がっていくでしょうか?

一般投資家の注目を集めることはできるでしょうか?

対投資家とのコミュニケーションスキルを磨くことが出来るでしょうか?

こうしたことを考えてみれば、企業や市場にとって、彼らは一定の価値を有しているとも考えられます。彼らが市場をかき回すことで、生まれてくる利益も確かにあるはずです。なにより、企業の更なる成長を求めて具体的な意見を提案するという行為自体は、利益共同体である株主としては当然のことなのかもしれません。ある意味、そもそもアクティビストのターゲットになってしまうということ自体が、企業のIR不足の結果であるのかもしれません。

重要なのは、アクティビストであるないにかかわらず、投資家に対して如何に効果的な成長ストーリーを説明できるかです。ストーリーを投資家に対して効果的に説明できれば、おのずと企業の存在感や株価は上昇します。結果として、大量保有するには多額の費用がかかることとなり、アクティビスト達は敬遠し、万一介入されたとしても、一般投資家達が企業のストーリーに賛同していれば、無茶な要求をされることもなくなるでしょう。

SGIM 研究員 甲斐博樹

注)*¹Sharonmerrill

http://blog.investorrelations.com/blog/author/sharon-merrill

“Leveraging_institutional_shareholder_relationships_to_reduce_activism_risk”を参照