業績報告はどの程度スクリプト化されるべきか

投稿日: 2016年2月1日

ある教授がスクリプトに依存しすぎると株価が低下する証拠を発見

デイヴィッド・マクカーン執筆

2016年1月11日 | CFO.com | US

各四半期の業績発表は企業にとって恒例の行事であるため、情報を漏らすことがないよう十分気を付けなければならない。言うのは簡単だが、実際にするのは難しい。経営トップはアナリストや投資家からの質問に答える際、潜在的なダメージを与えうる内部情報の不本意な流出をいかにして防ぐことができるか。

一つの明らかなやり方はスクリプトの利用である。具体的には、問題を引き起こすと考えられる質問を予想し、将来の問題を示唆することのない答えを用意しておくのだ。しかし新たな調査により、この方法については経営陣と投資家の双方に警告が出された。

米国会計協会ジャーナル「会計レビュー」最新号は、「現在Q&Aスクリプトに対する市場の反応は悪く、投資家たちは自発性の欠如を否定的な信号として捉え、ネガティブな情報の投資家への公開を遅らせる手段としてこの戦略の有効性に疑問を抱いている」と指摘している。

過去10年間における2,861件の業績発表のサンプルを基に、執筆者のフロリダ州立大学のジョシュア・リー教授はスクリプトに大きく依存していた企業の株式は電話会議当日とその翌日には、市場調整後リターンはサンプルの平均を大きく下回ったことを発見した。

サンプルの2日間の市場調整後リターンの中央値には0.1%のプラスがあったのに対して、スクリプトを多用した企業は0.2%のマイナスとなり、全体では平均を0.3%下回った。好対照なことに、スクリプトをあまり使わなかったまたはまったく用いなかった企業の株価は中央値を0.3%上回った。

これらの市場の反応は間違いではなかったということが調査によって示された。予想外の収益(アナリストが予測した収益以外に得られたもの)に関する調査を通して、リー教授は自発性が欠如している経営陣に対する投資家の反応は、この先2四半期における苦しくない予想外の会計パフォーマンスと一致しているということを理解した。言い換えれば、それは企業の将来的なファンダメンタルと一致しているのである。

これらの2つの四半期においては、最も多くスクリプトを利用していた企業の予想外の業績の中央値はサンプル全体における予想外の業績の中央値を12.5%下回った。

スクリプトの探知

研究者はトランスクリプトによって証明された業績発表の2つのパートにおける経営陣の話し方の違いを比較するために言語学的ソフトウェアを使った。具体的にはCEOやCFOまたはその他の役員が用意された原稿を用いて行う経営陣の意見表明とアナリストや投資家とのQ&Aで検証した。

リー教授は「書かれた文字のスタイルは自発的な言葉とは基本的に異なるということを調査は示している」と述べている。さらに「もし経営陣がアナリストからの質問に答える際に、スクリプトを使ったら、Q&Aの時の話し方は経営陣の意見表明のスタイルに似てくる。反対にもし経営陣が自発的に話せば、その話し方は業績発表の2つのパートの時とは大きく異なるであろう」と述べた。

三角法とベクトルを組み合わせた複雑な方法論を用いて、リー教授は40,820 件の業績発表における経営陣の意見表明とQ&Aの違いの度合と、その違いと様々な企業特有の株式市場や業績対策との関係性を調べた。

これらの発見が統計学的に有意であるか調べるために、リー教授は投資家の反応に影響する可能性のある数々の要因を管理した。これには企業規模や成長性、株価の変動、現在の収益における意外性、発表会で示された将来の収益ガイダンスにおける意外性、発表時のトーン(ポジティブな言葉とネガティブな言葉のバランス)、または経営陣の代表者が質問への回答を拒否したかどうかといったことなどがある。

リー教授はスクリプトの使用は2日間に及ぶリターンや長期的な予想外の業績にマイナスの影響を与えたということ以外に、以下を発見した。

・スクリプトを多用すればするほど、アナリストは業績発表後の30日間の企業の業績予想を大きく下方修正する。これは調査が示すように経営陣の自発性の欠如がマイナスの兆候と見なしていることを裏付けている。

・スクリプトの多用は業績発表後の3日間で、業績発表前の3日間と比べて、株式のビッドアスクスプレッドは大きくなった。

・スクリプトに大きく依存した企業は、スクリプトにあまり依存しなかった企業に比べて、報告会の際に将来の業績ガイダンスを示す割合が20%ほど少なかった。調査結果から経営陣がQ&Aのスクリプトに執着すると、企業はあまり情報を提供しないということが分かった。

これらの調査結果は、CEOやCFOが質問に回答する際にスクリプトの使用を探知しようとする投資家たちへ危険を知らせているのに対し、リー教授は早急に結論を出さないよう注意を促した。

リー教授は特に流暢でないCEOやCFOは、通常の手順を知られず、また隠蔽に気づかれないように、予め回答を用意しておくことを望む。より良い策として、自発的な回答からスクリプトを用いた回答へのシフトに耳を傾けることが考えられる。このような変更はデリケートな問題であるとリー教授は指摘する。

リー教授はまたスクリプトの利用は特定の状況下では経営陣にとって、好ましくない影響があるが、まだましであることを認めた。経営陣は不本意な業績を公表することで生じる不利益のほうが、健全なスクリプトの利用よりも重要であるという苦境に陥るだろう。これは多くの経営陣がある時点で直面するジレンマである。

投資家たちは経営陣の自発性の欠如を探知できるか?業績発表電話会議でのあらかじめ同意したスクリプトへの依存”と題された新たな研究調査は「会計レビュー」誌の1月と2月号に掲載されている。