アクティビスト投資家により見直しを迫られる企業のIR戦略

投稿日: 2016年1月4日

アクティビスト投資家により見直しを迫られる企業のIR戦略

執筆:Deirdre Dastous(NASDAQ)

2008年に発生した世界金融危機は、IR担当者にメッセージの発信方法や投資家からの質問への対応を見直すよう迫った。

世界金融危機は重大な転機をもたらした。経営陣と投資家との間の溝やすれ違いが拡大するなど、業界では多くの問題が浮き彫りとなった。

役員報酬制度に対するミューチュアルファンドやインデックスファンドの評価は低く、アクティビスト運動や委任状争奪戦が多数繰り広げられた。近年、これらの要因により、IR担当役員の役割は大きく変化しており、2015年もその例外ではなかった。

事業や市場の複雑さが増すなか、IRの役割もより戦略的なものとなっている。

標準的なIR担当役員は現在、会社の取締役会が、投資家が会社の事業政略をどのように捉えるのかをより深く理解し、長期的な関係に基づいて株主とのつながりを深める任務を負っている。

3つの大きなトレンドによって、組織内におけるIRの重要性はますます高まっている。

急増するアクティビスト投資家

アクティビスト投資家のプレゼンスはますます高まっている。リンクレーターズがこのほど発表した報告書によると、欧州で変化を求める株主の動きは拡大しており、2010年以降、126%増となっている。中でも英国では、いわゆる「アクティビスト活動」が活発化しており、2015年には32件が確認された。

今年9月末までに世界ではすでに860件を数え、2014年の907件を上回る勢いである。米国では、アクティビスト運動は2010年以降、304%増と拡大しており、ウェストロー・ビジネス・カレンツによると、2015年初からこれまでに2010年から2014年までの年間合計件数を大きく上回っている。

さらに部門別で見ると、2015年にアクティビストが標的とした企業は、消費者部門が最も多く、金融業界・産業界がそれに続いている。

アクティビスト投資家の急増により、IR 担当役員は株式監視などの手法を通じて、これまで以上に、株主層の変化を注視している。

戦略的なIR 担当役員は、アクティビスト投資家との意思疎通と関係を保つための準備も進めている。

投資家による企業の分類方法の変化

IR 担当役員に株主や潜在投資家の傾向や特性を理解することを求める、テーマ投資が増加している。

例えば、投資家による企業の分類方法は変わりつつある。同業他社は急変する状況や投資戦略を一層検討するようになっている。

ここで、ある企業が配当金を2%から4%に引き上げたとしたと仮定すると、同社は資本還元プログラムを急拡大した企業の株式で構成される、「合成バスケット」の一つとみなされる。

投資家にとってより大きな意味を持つようになった社会的責任投資など、こうした新しい種類の投資戦略にIR担当役員は注意を払う必要がある。

現在運用されている社会的責任志向の運用資産は1兆3,000億米ドルを超える規模に達する。この数字は過去2年で倍増した。特に欧州では、株主は社会的なあるいは環境的責任要因に基づいて、投資や投資撤収の決定を行う傾向を強めている。

同業他社の考慮事項および社会的責任投資は、企業が監視し取りくむべき「テーマに基づく」投資家の2つの顕著な特性である(もうひとつが、受動的投資家である)。

その結果、運用資産や特定部門など特定の要因のみに照準を定めることは、もはや有効ではなくなっている。

IR担当役員は、従来の同業他社の分析からでは手にすることができない、投資家の特性や傾向について、より広い視点が必要である。つまり、まったく新しいやり方で理想的な投資家を特定しなければならないのである。

機転の利くIR専門家なら、これら話題のテーマに合うように自身のあるいは自社のストーリーや目標プログラムに手を加えたいと思うだろう。

アナリストカバレッジを維持するメッセージの発信は困難に

証券業界やセルサイドの抜本的な変化により、多くの企業(特に中小企業)は、アナリストを惹きつけ維持する上で、困難に直面している。

IR担当役員はもはや、事業について定期的に報告する上で、アナリストを頼りにすることはできない。カバレッジの低下に伴い、IR担当役員にとって、投資家のターゲティングは特に重要な役割を果たすようになった。

企業へのアクセスを会議日程にどのように組み入れ、戦略的会議を実現するか理解することが重要である。

投資家を発見し維持する上で、品質の探求、準備、戦略に勝るものはない。

IR担当役員はまた適切な投資家に正しいメッセージを積極的に伝える必要がある。それには、投資家の意思決定の判断基準を理解することから始めなければならない。IR担当役員は自身のメッセージを投資家に確実に伝え、アクティビスト活動の動きなど、迫りくるものを早い段階で検知する必要がある。

自らの脆弱性をよく理解し、より強力な攻撃を展開するために、認識調査にますます目を向けている企業もある。

ブローカーモデルの変化による溝を埋め、他のバイサイドのアナリストや、影響力を一層高めているバイサイドのアナリストとのカバレッジを巡る競争において、IT担当役員は自社、業界、同業他社、潜在投資家に関する洞察を提供してくれる、高度なデータセットを必要としている。

IR担当役員が反応的コミュニケーションに照準を定める時代が過ぎ去ったのは間違いない。それに代わって、現代のIR担当者役員は、株主との長期的な関係を構築するために戦略を積極的に展開している。それに伴い、IR担当役員が提供する洞察は、役員レベルの対話において重要になっている。

2016年に向かう中、IR担当役員の役割は引き続き進化を遂げ、その組織内におけるプレゼンスは高まると予想される。この変化に合わせて、IR担当者は高度な情報へのアクセス、ツール、分析を手にする必要がある。これにより、適切な時に、適切な投資家に正しい情報を提供するのみならず、効果的な長期的事業戦略を策定する上で役立つ情報を取締役会に提供することが可能になる。