IRは株価に影響を与えるか?

投稿日: 2015年8月18日

2015年6月26日

執筆:ガーネット・ローチ

簡単に言うと、答えは「ノー」である。だが問題はそれにとどまらない。

なぜなら、マクロ経済から、現在主流の分野に至るまで、企業株価を決定する要因は多岐にわたるからだ。そして、どの部門も株価の下落を引き起こす可能性があるのだ。

IRは株価の押し上げ要因でないかもしれないが、企業の評価を左右することは間違いない。

「IRのベストプラクティスを実践する場合、企業の投資意欲や将来の見通しを的確に把握し、できるだけ多くの潜在的な投資家に伝えなければならない。そうして初めて、会社は正しく評価される。ただし、株価を最大化しようとする試みと必ずしも一致するとは限らない」と英国IR協会のスー・ショールズ会長は述べる。

信用、信頼、透明性を確保して初めて、良い評判を手にすることができ、「ひいては、比較評価を可能にする」とショールズ会長は説明する。

今週開催されたIR協会の年次会議でもこのテーマが取り上げられ、良い時も悪い時も、IRがもたらすことができる価値が浮き彫りにされた。ショールズ会長は次のように続ける。「たとえ、悪い業績予測を発表しなければならないとしても、IR活動を適切に進めて、信頼や良い評判を手にすることができれば、何ら手を打たずに悪い業績予測を発表しただけの企業に比べ、打撃を小さく抑えることができる」。

ファースト・ガルフ銀行のIR部長で、中東IR協会の理事を務めるソフィア・エル・ブリー氏はこの見解に賛同し、「IRが株価に全面的な影響を及ぼすと考えるのはフェアではない。というのも、株価は多くの外因性要因や内因性要因に影響されるからだ」と述べる。

「IRの役割とは、株価が適正価格に達するのを阻む要因を特定し、分析することである。それにより、株価の下落や評価ギャップが生じた場合、これに適切に対処できるようになる」

IRの責任

これは上級経営陣が認識していることでもある。IRマガジン誌が最近発表した「上級経営陣とIRに関する」レポートでは、上級経営陣の視点からさまざまな要因を取り上げ、それぞれがIR評価の重要性に着目している。その結果、同業他社と比較したPER(株価収益率)はさほど重視されていないことが分かった。第1位に輝いたのは株主基盤で、セルサイドのモデルの正確性が第2位、アナリスト・カバレッジが第3位となった。

すべての企業がこのアプローチを取っているわけではない。イベルドローラ社でIR担当ヘッドを務めるイグナシオ・キュエンサ氏は、IRプログラムの成否を測定する際、企業の株価をスペイン IBEX35指数やユーロストック50指数、Euro STOXX® index of European utilities など、様々な関連指標に照らして検証するという。

しかし、これは一般的ではないと、ダイムラー社でIR・レポーティング担当ヘッドを務めるビョン・シーブ氏は言い、同氏はより標準的な方法に従うという。自動車メーカーのダイムラー社では認識調査ではなく、各地で行われる株主総会などの際、投資家と面談したあとにフィードバックを求めるのである。「状況に応じて、われわれは主要な機関投資家と面談し、当社のプログラムの精度と有効性について尋ねている」。

「われわれは株価を、IRの有効性を図るツールとは捉えていない。ダイムラーの株価は、市場の動きを示す指標と捉えられることが多い。つまり、われわれの影響力を超えたパラメーターというものが存在する」とシーブ氏は述べる。だが、その考えに固執するのは困難ではないのか。「当社の株価が3%下落したものの、市場の動きがなかった場合、多くの質問が飛び交う。投資家から質問された場合、経営陣は速やかに説明できなければならない!」

一般論に同意しようが、株価下落をIR部の責任とみなそうが、IRの「質」は株価に目に見える効果をもたらしうる。

リベル社が2014年8月に実施・発表した直近の年次調査によると、バイサイドの回答者の4分の3が、優れたIRは株価に影響を及ぼすと考えており、「卓越した」IRは企業の株価を平均10%押し上げる可能性があるとしている。一方、「不十分な」IPは正反対の効果をもたらし、株価は平均20%下落する可能性があると見ている。