社外取締役が情報のギャップを埋める方法(前半)

投稿日: 2015年7月6日

2015年6月16日

コーポレートガバナンスについて最近行われた調査で、「なるほど」と思われる事実が確認された。取締役会に占める独立役員の割合が高くなると、その企業の透明性は高まるというものだ。

ただ、透明性の高まりは、社外取締役の数が増えたことによるものか、それとも透明性の向上に取り組む企業がより多くの社外取締役を設置する傾向にあるのかは、明らかでない。

ペンシルバニア大学ウォートン・スクールのクリストファー・アームストロング教授とウェイン・ゲイ教授は、マサチューセッツ工科大学スローンマネジメントスクールのジョン・E・コア教授とともに、Journal of Financial Economics誌に寄稿した論文「社外取締役は企業の透明性の向上のきっかけとなるのか」の中でこの問題を掘り下げた。 本インタビュー記事(Knowledge@Wharton)では、アームストロング教授とゲイ教授が調査結果を考察するとともに、コーポレートガバナンスや情報収集・伝達のあり方を改善するにあたり、企業に求められるものは何か、「万能な」解決というものが存在しない理由について解説する。

インタビュー編集版は以下のとおり。

お目付け役に常に情報を伝える:

ゲイ: 同調査では、コーポレートガバナンスの要としての、取締役会に注目した。企業の株主は取締役会を選任し、取締役会は経営陣が株主の要望に沿って行動するよう、戦略的決定や経営の監督を行う。

取締役会の構成員の多くは独立役員であり、経営に直接関わっていないため、経営陣のお目付け役や監視役を務めることになる。ところが厄介なことに、これらの社外取締役、独立役員は、会社で何が起きているのかについて十分な情報を得る必要があるが、通常、彼らは企業組織の上級幹部を務め、多忙な日々を過ごしている。そのため、企業への関与は年に4~6日程度である。そこで、経営陣を監督し助言を行う上で、必要な情報をいかに入手するかが重要となる。

本論文では、優れた決定を行う際に利用できる、有用かつ職務を果たす際に一定の確信が得られる情報を入手するために、企業、経営陣、取締役会はいかに行動すべきかに焦点を当てる。

重要な教訓:

アームストロング:今までに得た重要な教訓は、情報と監督者、意思決定者の間の二極間でのつながりが不可欠だということである。実際、それらは連携する必要がある。一定レベルの取締役を設置するには、一定水準の情報、環境、または一定の透明性が必要になる。

取締役会に目を向けると、社外取締役と社内取締役の間で大きな緊張またはトレードオフが見られる。社内役員は会社の関係者であり、日常業務に従事している。彼らは会社について十分な予備知識がある。そのため、独立役員のように、外部情報に依拠することはない。一方、独立役員の出社日数は通常、年に5~6日にすぎない。独立役員は意思決定を迅速に行い、適切な質問を行うための、情報を手にすることができる情報源を必要としている。

アームストロング:我々は、他の2人の共同執筆者とともに、調査報告書の作成に取り組んでいる。一人はFRB(連邦準備制度理事会)調査局の職員で、金融機関を担当している。そこで、我々は、とりわけ、金融機関やや銀行との関連の中で検証した。

「上場企業の意思決定において、社外取締役の意見が一層重視されるようになっている。そして、社外取締役が必要な情報を手にして初めて、その仕組みは機能する」 –ウェイン・ゲイ

調査で分かった驚くべき事実

ゲイ:論文の中で確認された興味深い事実のひとつに、情報と、取締役会の構造の間の関係がある。

具体的には、企業の情報開示が不十分な場合や、企業が社外取締役に情報を伝えるのが困難な場合に、企業に取締役会における独立した社外取締役の比率を高めるよう強制しても、うまくいかない可能性がある。これは、こうした役員が優れた職務を遂行する上で必要な情報を入手できないおそれがあるためだ。

同時に、取締役会に独立役員を含めるよう強要する際、これらの役員はより適切な情報の確保に努めることが分かった。そして、取締役が企業に透明性を高めるよう強く求めるのは、この複雑かつダイナミックな情報構造による。しかし同時に、独立役員の割合が高すぎる場合、情報に関する問題が発生し、これらの取締役が必要な情報をすべて入手できないという事態に陥る可能性がある。

方法論

ゲイ: 2000年代初頭にある規制が通過した。その一部は、主要な株式市場に対する規制であった。つまり、取締役会の過半数は社外取締役としなければならないというものであった。

それ以前は、社内役員が過半数を占めるケースが多かった。そしてこの新しい規制により、取締役会の過半数を社外取締役にしなければならなくなった。これに伴い、企業は取締役会の構造を大幅に変更する必要に迫られ、大きな混乱が見られた。社外取締役の登用を強いられ、外的ショックを受けることになったのだ。

それでは企業はこれにどのように対処しているのか。企業は新任の独立役員にスムーズに情報を提供できているのか。規制導入前、取締役会が社内役員8人、独立2人で構成されていた場合、規制導入後には、社外取締役または独立役員7人、社内役員3人か4人で構成されるようになったのか。さらに、どうにかして社外取締役に迅速に情報を提供する必要が出てきている。

そこで、我々は「企業は財務報告の質を変えたのか、企業は異なる監査プロセスを採用しているのか、企業は業績予測やアナリスト予測という形で公開情報を開示するようになったのか、単なる社内情報にとどまらず、取締役がより優れた情報を入手できるように、企業は措置を講じているのか、を検証した。経営陣に優れた情報を提供するよう要請するだけでは、多くの場合、不十分であり、信頼できる情報源ではない可能性がある。

アームストロング:規制導入直後の結果は、独立役員の割合が低かったこれらの企業が、過半数を独立役員としなければならなくなったというものである。

これらの独立役員を迎えた後、どのような二次的な結果につながったのだろうか。以前から独立役員の確保に努めていた企業は、規制導入後に、組織された新しい取締役会の構造に対応するよう、情報環境をどのように変えたのだろうか。規制は最初に倒れたドミノのようなものである。現在は、その結果を待っているところだ。

調査によって解消された誤解

ゲイ:コーポレートガバナンスに関して一般に多く見られる誤解のひとつは、企業が利用できる一定のベストプラクティスというものが存在するという内容である。一つのベストプラクティスでコーポレートガバナンスを語れるという考えは誤りである。

一つのベストプラクティスでコーポレートガバナンスを語れるという考えは誤りである」

ウェイン・ゲイ

実際問題、たった一つのベストプラクティスで、コーポレートガバナンスの方法を説明することはできない。ある企業にとって最良の慣行も、別の企業にとってはそうでない場合がある。またかえって高額な費用がかかったという場合もある。そこで、我々は取締役会に焦点を定めた。単に、企業に社外取締役の割合を高めるように強いるだけでは必ずしも十分ではなく、これらの社外取締役が不透明な状況で意思決定を行う場合には、良い結果につながらない。これらの社外取締役が十分に情報を手にしなければ、優れた職務を遂行することはできない。

この考え方を取り入れることで、実質的にほぼすべての単一なガバナンス構造を課すことができるだろう。[さらに]人々は、多くの場合、取締役会会長はCEOではなく、社外取締役が務めるべきだ[と主張する]。CEOと取締役会会長の責務は、切り離さなければならないという。

また、CEOが取締役会会長を兼務することが良い時も悪い時もあるという、広範な研究が存在する。例えば、好ましくない取締役会、役員報酬、ストックオプション、株式持ち合い、ガバナンスの各構成要素、などがある。またベストプラクティスはたった一つとは限らないことを心にとどめておくことが肝要である。すべては会社が置かれた状況によるのである。まさに人々はそのように考える必要がある。

アームストロング:さらに進んで、そもそも、皆に同じ方向に向くように強要する前に、なぜ違いがあるのか考えてみよう。すでに社外取締役が取締役会の過半数を占める企業もあれば、そうでない企業もあるのはなぜか。それらは調査や開発を積極的に行わない企業である可能性がある。そして独自情報の多くは、社外取締役に正確に情報を伝達することが難しい場合もある。あるいは、独自の理由によってそうした情報を社外取締役に提供することを企業が望まないということも考えられる。そのような企業の場合には、社内役員が取締役会の過半数を占めるというのも頷ける。