ウォール街に悪いニュースを伝える際によく見られる誤り

投稿日: 2015年5月18日

ウォール街に悪いニュースを伝える際によく見られる誤り

 

2015年4月28日     執筆者 クリス・ブリンジー

人は誰しも、悪いニュースを伝えなければならない状況には陥りたくないものです。私は子供の頃、ホッケーゲームで遊んでいて地下室の窓を割ってしまい、両親に伝えるのを「忘れた」経験があります。

50~60センチの積雪に見舞われ、地下室が多くの雪で覆われてしまったことで、私の秘密は露見しました。両親にひどく叱られたのを覚えています。窓ガラスを割ってしまったことよりも、自分の行いに対して責任を取らなかったことで叱られたのでした。告白せずにいた結果両親の信頼を裏切り、失った信用を再び取り戻すのはとても難しいのだと言われ、ひどく嫌な気分になりました。

これは、ビジネスの世界にも当てはまります。企業が、その最も価値ある資産、すなわち社員や株主との関係を保つうえで、信頼と透明性は何にもまして重要です。フォーチュン500社に選ばれるような、長い歴史を誇る由緒正しい企業であっても、あるいは最近新株公開したような会社でも、ライフサイクルの中には悪いニュースが浮上する時期が必ず巡ってきます。そのようなときに、万全の備えがあることが大切なのです。

この18年間、バイサイドの投資家として、私もそれなりの数の悪いニュースを耳にしてきました。そして悪いニュースを公開する際に、企業が犯した間違いも目にしました。ここにIR公開でよく見られる、回避すべき誤った事例を紹介します。

悪いことをよく見せようとする

簡単に言うと、明らかに悪い状況を『粉飾』しようとするとき、間違った発想によるIR戦略を採ってしまうのです。これに関しては、ある小さな製薬会社の失態を思い出します。重要な臨床試験の結果を発表した時のことでした。当時同社が開発していた唯一の医薬品の臨床試験で、開発の成功はその結果に大きく左右されていたのです。

残念ながら臨床試験は失敗に終わりました。しかしさらに残念なのは、経営陣の反応です。その重要性から、肯定的な話をしなければならないと経営陣がプレッシャーを感じたのか、あるいはIR活動へのアドバイスがお粗末なものだったのか、同社のプレスリリースで臨床結果はホームラン級の大成功を収めたかのように発表されました。批判を甘んじて受けて、その後の戦略計画を詳細に発表するのではなく、臨床結果はとても素晴らしいもので、その薬が臨床試験対象以外の患者にも効力を発揮する可能性があると、投資家に伝えるほうを選びました。

この会社は、 (1) 臨床結果により、医薬品は対象とする患者に効力がないと証明されたこと、(2) 新たな臨床試験を行わなければならなかったこと、(3) 新たな臨床試験には追加資金の調達が必要であること、(4) 認可の取得にはさらに2年かかること、(5) 臨床試験が成功していたとしても、その薬は本来予定していた市場の、ごく一部に使用される見込みであることを、認めることができなかったのでした。

この事例が発したメッセージはシンプルです。粉飾はご法度。投資家はこの手の不正行為を一番嫌います。自身の行動に責任を持ちましょう。そのうえでニュースが与えた衝撃を和らげるために、ベストを尽くしましょう。信頼を得ましょう。きちんと準備しましょう。そして投資家からどんな質問がくるかを予測しておきましょう。投資家に問題児扱いされるのではなく、問題解決者としての印象を与えるのです。

かくれんぼで遊ばない

企業が犯しやすいもう一つの間違いは、(内容の良し悪しに関わらず)ニュースを誰も注目していない時に発表することです。もちろん会社がニュースを発表するタイミングについては多くの場合、出来事が起こったタイミングが悪かったからなのか、発表時期の決断に誤りがあったからなのか、判断することは困難です。それでも、要点はシンプル。誰も見ない時に、プレスリリースを発表するような間違いを犯さないこと。

私のお気に入りの事例を挙げましょう。ある会社が製品の認可について悪いニュースを発表しました。結果的に同社の株が大きく値を下げ、投資家に大損をさせてしまうという事態を招いたのです。

しかしこれは私が指摘したい間違いではありません。この会社は、状況を説明するという英断に踏み切ったのですから。すでに述べたように、悪いニュースはどの会社にも起こります。実は同社は、それから数日後に間違いを犯しました。大型連休の前の日(毎年この日、ウォール街では皆、仕事を早めに切り上げます)、アメリカ証券取引委員会に8-K報告資料を提出したのです。報告内容は、主要経営陣が保有するオプション価格を、下落した株価に合わせて引き下げるというものでした。

明らかに暴挙と思われる仕業はひとまず置くとして、この事例に対する適切なメッセージは、株主に敬意を払い重要な情報は適宜に伝えるべきだということ。そうすれば株主は内容を消化し、その情報が会社にどんな影響を与えるのかを、経営陣と話し合う時間を持つことができます。

将来に焦点を当てないという誤り

すべてが悪い方向へと進んでしまうような窮地に立った経験がありますか?ニュースの流れは思うような結果を生み出しはしません。方向を見失い、あるいは他のネガティブかつ不測の出来事が起こるかもしれません。このような状態では投資家の期待に応えようとすることは困難です。

しかし、まさにそんな状況に追い込まれた、ジェネリック医薬品メーカーを取材したことがあります。この会社は粉飾もかくれんぼもせず、まったく別の手段を採りました。

このケースでは不運にも規制が邪魔をして、法務面と米国食品医薬品(FDA)に関連した遅れが続いていました。次の四半期にどのような数字を報告することになるのか、経営陣も頭を抱えてしまうような事態に追い込まれたのです。

ところが次の年には、同社は以前にも増して見通しが明るくなりました。彼らのとった戦略は、事件の起きた年に効果的に「敗北を認める」こと。そしてその代わりに投資家の注目を次年度に向けるようにしたのです。理想的とはいかないまでも、時には唯一の解決策になるという好例です。

ビジネスの性質上起きた現行事業年度の不安材料。経営陣はその不安材料に関しての次年度への期待、なぜ期待できると見極められ、なぜ計画通りに物事が進むという高い自信があるのかについて、実証することができたのです。最終的に彼らはこの出来事を投資家が気に入るような、信用のおける、十分に計画されたガイダンスへと導き、決着をつけました。

なぜこの戦略が功を奏したのかと思うのは、当然のこと。第一に、市場や投資家たちはネガティブな確実性は不確実性よりもましだと、常に考えています。第二に、投資家たちは問題に対する経営陣の率直さとオープンさを評価しました。最後に、この会社は問題に関して何の答えも出さずに、リリースを行ったわけではありません。経営陣は信用に値しました。問題とその問題が引き起こす衝撃の余波へ理解を示し、投資家が問題の衝撃をシミュレーションしながら、ポートフォリオの管理者に衝撃の意味を伝えることができるように、必要な情報を与えたのですから。

決して取ってはいけない対処法は、投資家に情報を与えず想像させること。最悪の場合には、投資家が全く間違った結論に達してしまいます。不確実性に直面した投資家にとってみれば、その会社の株を売って新しい投資先を探すことのほうが楽なのです。