(後編) 企業レポーティングの5つのトレンド

投稿日: 2015年3月30日

2014年10月9日  執筆者 ガーネット・ローチ

イメージを把握せよ

近年顕著なもう一つのトレンドはインフォグラフィックスの活用だと、マーチャントカントス社の業務執行役員であるリチャード・カーペンター氏は話します。「[アニュアルレポートをスリム化する]取り組みの一つに、大量のテキストをインフォグラフィックスに置き換えることが挙げられます。[この方法]は、真価を発揮する段階に来ていると感じます。」インフォグラフィックスの活用は、米国ではすでに随所で見られ現在はヨーロッパで広がりを見せていると言います。マーチャントカントス社の米国支社で取締役を務めるジェフ・シンドン氏も、同僚のカーペンター氏の意見に同意しています。「企業は、データの可視化の影響力に注目し始めています。ステークスホルダーは大量の情報をもてあましており、企業側もより効果的に情報を整理して提供しなければならないことを十分理解しています。インフォグラフィックスは、複雑な企業情報をより身近なものにしました」。

シンドン氏が『ビジュアル・ダッシュボード』と呼ぶ形式では、投資家は今までとは違ったフォーマットでデータを確認できます。必ずしもチャートにとってかわるものではありませんが、インフォグラフィックスを見れば、投資家は『企業のストーリーを、視覚に訴える新しい方法』で確認できるのです。

さらにシンドン氏は、アイゼンマン・アソシエイツ社の社長ニーナ・アイゼンマン氏のビデオ製作の秘訣と、同じ内容のアドバイスをしてくれました。「文章をそっくりそのままビジュアル化するなんて、ナンセンスです。伝えたいストーリーを戦略的に精査しビジュアル化したものを使って、メッセージをどのように支えるかを考えるのです。インフォグラフィックスのアプリをどうするか、SNS、デジタル版、プリント版を含めて、異なるチャンネルでどう活用するか、考えることが重要なのです」。

株主総会招集通知書の改善

改善を図っているのはアニュアルレポートや四半期報告書だけではありません。特に、アニュアルレポートのスリム化が行われるようになるにつれ、「企業は株主総会招集通知書のデザインにもこだわり始めました。ブランディングへの動きは顕著であり、QRコードの活用に[おいても]、オンラインのレポートに自動的に飛ぶことを可能にしています。」と、アイゼンマン氏は述べています。株主総会招集通知書革命の先駆者と言えば、コカ・コーラ社です。同社のアソシエート・ゼネラルカウンセル兼コーポレートセクレタリーであるグロリア・ボウデン氏は、この動きは2011年頃に始まったと言います。「[株主総会招集通知書]は単なる法務文書から、コミュニケーションを目的とする文書に様変わりするきっかけになると考えたのです。」と、当時を振り返りました。

「我々が、現在約2万にものぼる株主の皆様と本当の意味で語り合えるのは、毎年行われる株主総会の場だけです。株主総会を、弊社が誇りとするガバナンスについて、役員報酬について、そして記載を法的に必ずしも義務付けられていないその他の話題にも焦点を当て、株主の皆様に説明する機会ととらえるべきだと考えました。」その一環として同社は、昨年の株主総会招集通知書の裏にQRコードを付けて、ウェブサイト『コカ・コーラ・ジャーニー』に飛ぶように工夫しました。

「ブランディングの観点から見ると、弊社が株主総会招集通知書に泡のような円を多用していることにお気づきの方もおられるかもしれません。色は赤を基調に、コカ・コーラのボトルのデザインを用いるなど、バリエーション豊かに表現しています。例えば、ページ番号をボトルの王冠に見立てた円の中に書きました」。

株主総会招集通知書でブランド認知度を高めるとともに、株主向けの文書を簡素化することを目指したとボウデン氏は言います。交流を通じて、株主が株主総会の時期には、とても多忙になることが明らかになりました。「株主の皆様は、所有する株式数に応じた議決権を有しており、票を投じるにあたってはとても慎重です。必要な情報をすべて検討したうえで投票したいと考えているのです。そこで弊社では、投資家の皆様が必要な情報を入手しやすくなるよう目標を立てました。賛否両論あるとは思いますが、[情報]を入手してご理解いただけるものに仕上げました」。莫大な時価総額を誇るコカ・コーラ社の最新の株主総会招集通知書では、投資家向けのメッセージに、従来の会長の挨拶ではなく、全役員を代表したメッセージと個々のサインを入れた形にしました。さらに、会長兼CEOのムーター・ケント氏が『年間を通じて、よく質問に上がった事項』をQ&Aページで回答するページもあると、ボウデン氏は説明します。

役員報酬の方針に反対する投資家への(有効な)対応として広く活用されている方法ですが、この形式で企業レポートの情報開示を行うのは米国内では初めてであると、米国証券取引委員会のファイリングスペシャリスト、ラブラドール社の情報開示コンサルタントのイアイン・プール氏は、『IRマガジン』の姉妹誌『Corporate Secretary 2014年夏号』 でのインタビューの中で述べています。

すべてをひとつに

IRアプリについては様々な議論が起こっていますが、ユニリーバ、マラソン・オイル、キングフィッシャーなど、投資家やアナリストに向けて、タッチひとつで株価情報やアニュアルレポートのページに飛ぶことができるIRアプリを使って、情報提供を行う企業が増えています。それもそのはず、今や企業レポーティングに関するアプリは、新しいトレンドを一つにまとめた、ユニークで便利な機能を備えています。

「弊社では、企業レポート用アプリは、何年にもわたるレポート内容にアクセスできる状態にしておかねばならないと考えています。」と、Q4ウェブシステムの創業者兼CEOのダレル・ヒープス氏は言います。「専用アプリの活用で企業のレポートすべてが閲覧でき、PDFの形でダウンロードすることも可能にしなければなりません。その他の重要な特徴としては、サムネイル、ブックマーク、キーワードサーチ、メールやシェアなどの埋め込み型ドキュメント・リーダーを使って、文書をオフラインでも読める状態にしておくことです」。

「モバイルアプリの中では、プッシュ通知が、もうひとつの非常に有用な機能です。携帯電話向けに開発されたアプリで、タブレットは使用中でなければ『閉じた』状態になっていますが、携帯電話は常に電源が入っており、『開いた』状態にあります」。アップストアやグーグルプレイから、わざわざダウンロードする必要はないとヒープス氏は説明します。わずか2年前にQ4ウェブシステムズが開発した200あまりのモバイルアプリの大半は、「ブラウザー経由で用いることができ、ダウンロードの必要はありません」。ヒープス氏は、今ではこのオプションのほうが「より人気が高い」と言います。

今年初めにアップしたブログの中で、ヒープス氏はQ4ウェブシステムズが行った調査について言及しています。「ウェブサイトのIRページへのアクセスのうち、25%はモバイル端末からですが、Q4のみならず同業他社も、この割合は1年後には50%を[超えていく]だろうと予想しています」。

アプリを使っても使わなくても、ダウンロードが可能でも、あるいはウェブベースで展開するにせよ、モバイル機器の活用により、投資コミュニティの交流のあり方は永遠に変化し続けるとヒープス氏は話します。「企業レポートも同じであり続けることなど、決してないでしょう」。