(前編) 企業レポーティングの5つのトレンド 

投稿日: 2015年3月17日

企業レポーティングの5つのトレンド - スリム化のすすめ(前編)

2014年10月9日  執筆者 ガーネット・ローチ

企業レポーティングの世界を刷新する新動向

企業レポーティングの話題などは、最も革新的なテーマとは言えないかもしれません。結局のところ監督機関によって義務づけられたもので、投資家やアナリストは単に数字をチェックするだけでしょう?いいえ。違います。書類のオンライン化が進み、企業も自社の利益率やEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)に対する純負債率にとどまらず、もっとよい数字を大々的にアピールできる、企業レポートの新時代がやってきました。また投資家も専用アプリを使えば、オンラインのアニュアルレポートでCEOが語りかけるビデオを視聴し、その会社を知ることができるのです。

年度末の大仕事

近年、新しい規制や要件公開方針が発効されるたびに、アニュアルレポートは厚みを増していきました。一部の業界、特に金融業界では、2008年の世界金融危機以降、情報開示を徹底するよう圧力が加わり、何度末になると報告書の準備作業に追われる銀行もあります。HSBCの2013年度のアニュアルレポートは、実に596ページにも及びました。しかし現在、大量に膨らんだ情報量の削減に真剣に取り組み始めた企業も出てきています。今年の『Investor Perception Study – Europe 2014』調査でも、多くのIR専門家から、アニュアルレポートの情報量の削減に努めているという声が聞かれました。例えば、『フォーブス』誌ランキング25位の企業、ドイツの保険会社アリアンツ社のIR部長オリバー・シュミット氏が、「弊社ではアニュアルレポートのページ数を減らしました。もちろん内容が見劣りしないように注意を払いました。」と述べています。「情報の価値を下げずに、情報量を大幅に削減しました。その結果、以前に比べてとても読みやすくなったと、大変好評でした。しかも、同じ情報を、より分かりやすい構成でより焦点を当てた形になったのです」。アリアンツ社だけではありません。英国酒造メーカー大手、ディアジオのIR担当ヘッド、キャサリン・ジェームズ氏も、今年度は従来のアニュアルレポートのボリュームを少なくとも20%削減し、今後も継続する予定だとコメントしています。

マーチャントカントス社のマネジングパートナー、リチャード・カーペンター氏は、「多くの企業が[ページ数]の削減に取り組んでいると思います。企業も、様々な部署から相も変わらず古くさい情報が集まってきて、年々アニュアルレポートが肥大化していることを認識し、折に触れて情報量を削減する必要に迫られています」。大企業や、より複雑な業界の企業では、アニュアルレポートのスリム化に終始していますが、アイディアを生かして新聞紙大で作成したり、インフォグラフィック・スタイルを取り入れたり、インスタグラムにアップする企業も出てきています。

トップが画面で

アイゼンマン・アソシエイツの社長ニーナ・アイゼンマン氏は、「クライアントに見られる傾向として、印刷するページを削減すると、つまり従来のアニュアルレポートからの脱却を図ろうとすると、おのずとオンライン版に移行していくということが挙げられます。」と、説明しています。では、オンライン版レポートの大きなトレンドとは何でしょうか。それはビデオメッセージです。

アイゼンマン氏は一例として、会員が所有・経営する農業協同組合ランド・オー・レイクスの、2013年度の従来型アニュアルレポートを挙げました。お決まりの会長やCEOの写真つきメッセージを掲載しましたが、オンライン版では「メッセージの掲載とともに、CEOが大きな会議で全ステークホルダーに向けて語りかける映像も収録しています。[映像]は余計なものではありません。ただメッセージを読み上げているのではありません。ステークホルダーにとって、興味深い内容を補足しています」。映像を用いてアニュアルレポートに趣を添えると聞くと、消費者ブランドやテクノロジー企業がトレンドを牽引するイメージがありますが、アイゼンマン氏は、映像はすべての企業にアピールすると指摘します。「我々はフォーチュン誌に、[ビデオ]メッセージを活用している14社のリストを掲載しましたが、実に様々な業界の企業の名前が挙がりました。消費者ブランドのコカコーラ。フェデックス、こちらもいわば消費者ブランド。ゴールドマン・サックス、リバティ・ミューチュアル、エトナ、シティ・グループと、多くの金融機関の名前も挙がっています。さらにGE、フォード、ゼネラル・モーターズ、石油会社やガス会社。キャタピラーのようなテクノロジー企業も名を連ねます」。実際、フォーチュン100社の約25%が、2013年度のアニュアルレポートで映像を活用しており、結果として利益が前年比で15%増となっています。「殆どの企業はお試し感覚で」、既存の情報の一部をオンライン版に移行しており、「[ビデオ視聴が可能なアニュアルレポート]を作成した企業は、翌年にはさらに多くの内容を移行させる傾向にあります。」と、アイゼンマン氏は述べています。

今まで以上に企業がアニュアルレポートの強化を模索していますが、[ビデオ視聴が可能なアニュアルレポート]の未来はどのようになるのでしょうか。アイゼンマン氏は「ビデオそのものの質が鍵。」と指摘します。「ホームビデオやDIYレベルのものから、テレプロンプターを用いて映像を合成したものまで、より高品質なビデオメッセージが考えられます」。

そしてアイゼンマン氏は、会社のストーリーも忘れてはならないと述べています。「会社の実態を、しっかり把握できるビデオの作成を目指すべきです。グローバルに展開している企業であれば、世界各地の工場を写すなど、その企業を雄弁に伝えるものでなければなりません」。