独立社外取締役の役割

投稿日: 2015年2月3日

独立社外取締役の役割

1) 独立社外取締役を選任する

 独立社外取締役とは、文字通り通常の取締役と異なり、会社からの独立性が高く、利害関係を持たない取締役のことを指します。現在、昨今のコーポレートガバナンスの強化や、会社法の改正等も相俟って、その選任が活発になってきています。今回は、日本における独立取締役の登用状況と今後の展開についてみていきたいと思います。

2) 選任活発化の流れ

 かねてより独立社外取締役の設置は奨励されて来ましたが、2014年の2月に東京証券取引所の有価証券上場規定が改正され、独立役員の選任が、少なくとも1名以上確保するよう努力しなければならないという努力義務となり、その選任が加速しました。加えて、「会社法の一部を改正する法律案」が、2014年6月に可決、公布されたことにより、いわゆる上場企業においては社外取締役を置いていない場合には社外取締役を置くことが正当でない理由を説明しなければならないという、いわゆるComplain or Explain形式の条文が追加されることとなりました。こうした流れを受け、日本の上場会社においても独立社外役員の選任が高まってきています。東京証券所によれば、一部上場企業のうち既に61.4%が1名以上の独立社外取締役を選任しています。(下記図)

Feb 3 2015 Graph

東京証券取引所(東証上場会社における社外取締役の選任状況について<確報>(平成26年7月25日)より作成

3) 独立社外取締役の意義とコーポレートガバナンス

このように徐々にその選任が活発している独立社外取締役ですが、その役割については再度確認しておく必要があります。

一般的にその役割として言われているのは、株主との利益相反を防ぐという役割です。形式上、株主は会社の経営を経営者に委任していることとなっていますが、そうした立場上、経営者が株主の利益に反する行動を起こすことがあり得ます。そうした株主と経営者の利益相反を抑制するために、いわば“監督者”として社外取締役を機能させる、というものです。こうした役割はコンプライアンスの側面から見ても言うまでもなく重要なものです。特に伝統的な日本企業の様に、終身雇用や年功序列、新卒一括採用による安定した雇用基盤をベースとした従業員の高い忠誠心に依存した監視・監督体制を敷いてきた企業にとっては、こうした社外の人間によるチェック機能というのは一層重要で効果的なものとなります。しかし、こうした役割は、独立社外取締役のディフェンシブ、あるいは消極的な側面にすぎません。更に重要となるのは、独立社外取締役のポジティブな役割、つまり企業価値の向上に資するという面です。

独立社外取締役が通常の社内取締役とその性格を異にする最大の点は、文字通り彼らが“社外”の人間であるということです。企業の経営に対して、社外の経験に基づく知見を有した人間が、企業の内部以外の視点から助言を行うことによって、多角的な経営が可能となり、ひいては企業価値の向上に資することが出来るのです。独立社外取締役が、“独立した”“社外”の人物が企業価値の向上に貢献しうるという点が、最もポジティブな役割ではないでしょうか。前回のコラムでも紹介したとおり、昨年の12月にコーポレートガバナンス・コードの原案が発表されましたが、この原案においても、独立社外取締役の役割として「自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと*」とし、独立社外役員の“社外”の人間としての意見が企業価値の向上に資することを強調しています。

4) 企業価値の向上に向けて

今年は先のコーポレートガバナンス・コードや、改正会社法が施行される予定となっています。先の東京証券取引所のデータでの2013年から2014年の伸び率を見ても、独立社外役員の選任の流れは一層加速することが予想されます。ですが、留意しておかなくてはならないのは、現時点では、独立社外取締役はその選任の努力をすべきものであって、これが“選任しなくてはならないものではない“ということです。今後こうした規定が更なる強行規定へと変化していくかは分かりませんが、これはある種選任に当たる企業の自主性が保たれているとも理解できます。しかし、Comply or Explainという基本から選任しない理由を説明しなければなりません。とかく日本の企業ではこうした案が強制的なものとなると、対外的な批判を浴びないために取りあえず形式的に対処するといったケースが散見されますが、今回のケースでは、あくまで現時点では選任の有無は企業に委ねられています。企業にとっては、こうした流れを活かし、改めて自社の経営体制やステークホルダーとの関係性を見直し、選任するにせよしないにせよ、企業の価値向上につながる判断を行うことこそが重要であると言えるでしょう。

SGIM 研究員 甲斐博樹

注)

* 金融庁資料 「コーポレートガバナンス・コード原案」より

* 東京証券取引所(東証上場会社における社外取締役の選任状況について<確報> (平成26年7月25日)

http://www.tse.or.jp/listing/yakuin/b7gje6000000jc8k-att/b7gje6000004qeeg.pdf