コーポレートガバナンス・コード原案が発表

投稿日: 2014年12月26日

1. コーポレートガバナンス・コードの原案発表

 およそ2週間前の12月14日、第47回衆議院選挙が行われ、自公政権が全議席の3分の2以上の議席を獲得し、安倍首相の続投が決定しました。この結果、就任当初より掲げられていた経済政策、いわゆるアベノミクスは今後更に加速して進められることとなるでしょう。

こうした成長戦略の中で、民間企業の成長は“第三の矢”に据えられ、以前から成長実現のための諸政策が積極的に策定・施行されて来ました。コーポレートガバナンス・コード(以下CGコード)もその一環として従来より策定の検討が進められていましたが、12月12日、金融庁の「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」においてその原案が発表されました。以前、当コラムでもその概要について紹介しましたが(題:「CGガバナンスコードについて」)、今回は発表された原案*¹を確認すると共に、改めてCGコードの目的と影響を再確認していきます。

2. CGコードの目的とスチュワードシップ・コードとの関係

コーポレート・ガバナンスとは、日本語では文字通り「企業統治」と訳されますが、今回の原案にもある通り、「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」*²であり、CGコードはその実現のための行動原則のことを指します。これは、本来は企業が株主に対する説明責任(受託責任)を負っているという株式市場の原理に基づき要請されるものですが、今回のCGコードの目的はそれだけではなく、その徹底による迅速な意思決定等を通じた企業価値の向上にこそあります。また、今年2月に金融庁より日本版スチュワードシップ・コード(「責任ある機関投資家の諸原則」)が発表されましたが、こちらのコードも最終的な目的はCGコードと同じであり、企業が投資家との建設的な対話を通して企業価値を向上し、株主の期待を満たすことのできる企業へと成長を果たすことにあります。企業と投資家の対話において、スチュワードシップ・コードが投資家に対する行動原則であるのに対し、CGコードはいわば企業側の行動原則であり、この二つは日本企業の企業価値向上、またその成長において車の両輪ともいえる役割を担っています。

3. CGコードの基本原則

今回の原案では、そうした目的を踏まえ、以下の様な大原則と背景が掲げられています。

株主の権利・平等性の確保

・・・多種多様な株主の権利を保護し、企業に対し建設的な意見表明が出来るような環境の整備や、そうした意見を生むために、資本政策など、会社の行う政策に関して十分な説明を行うこと。

株主以外のステークホルダーとの適切な協働

・・・上場企業は会社という存在が社会を構成する一員であることを理解し、従業員、取引先、地域社会等の様々なステークホルダーとの適切な協働に努めること。

適切な情報開示と透明性の確保

・・・上場会社は、投資家保護や資本市場の信頼性確保の観点から、法令に基づく情報開示は勿論のこと、それ以外の定性的な情報等についても主体的に取り組むべきである。

取締役会等の責務

・・・上場会社の取締役会は株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値向上のため、企業戦略の方向性の説明や、適切なリスクテイクを支える環境設備や、独立社外取締役の登用も検討すべきである。

株主との対話

・・・「日本版スチュワードシップ・コード」策定に伴い、機関投資家には目的を持った対話が求められている。企業は、自社の企業価値の向上に資するよう、株主からの対話には出来るだけ前向きに対応するべきである。

以上の5つが基本原則として挙げられていますが、いずれも企業の中長期的な成長・価値向上を目的としていることに変わりはありません*³。特に、③、⑤の項目では、先の日本版スチュワードシップ・コードにダイレクトに触れ、株主、その他ステークホルダーとの対話がいかに重要であるかを説明しています。

上記のCGコードはあくまで原案であり、今後更なる検討も行われるでしょうが、2015年春には導入が決定される運びとなります。本コードは強行規定ではなく、「Comply or Explain」(=遵守せよ、さもなくば然るべき説明を)という形をとっているため、強制されるものではありません。しかし、2月発表の日本版スチュワードシップ・コードについては、12月9日時点で既に175の機関が受け入れを表明している現状をみるに、受託責任を負う企業においても本コードの受け入れは必然であるといえます。何よりも、企業統治の徹底による迅速な意思決定等を通じた企業価値の向上が真の目的である以上、施行後の積極的な活用、運用が望まれます。

4. CGコードの施行とIR

言うまでもなく、今回のCGコードの原案が施行されれば、IRというものが株主・その他ステークホルダーに対する窓口である以上、企業のIR活動の強化が急務となってきます。IR従事者がこうしたコードに基づいた行動を徹底するのは当然ですが、今後必要となってくるのは、先の原案にもあるように、IR従事者だけでなく代表取締役や取締役自らが、株主に対して自社の今後の展望を合理的に、時には相応の熱意を持って説明することです。そうして生きた対話をすることによって株主が納得し、今度は株主から建設的な意見を投げかけ、それに企業が答えるという双方向のやり取りが可能となってはじめて最終的な目標である企業価値の向上が果たせるのではないでしょうか。もちろんそのための情報開示や、インフラの設備も重要ですが、何よりも然るべき人間が、然るべき説明を行うという大原則の徹底こそが最も重要なのです。

来年は上記二つのコードが本格的に施行されると同時に、社外取締役を採用していない場合にはその理由を説明しなければならない、等の条文を新たに盛り込んだ改正会社法が施行される予定であり、日本企業の新たなIR活動の黎明期となるかもしれません。企業のトップ及びIR従事者は、こうした環境の変化に合わせ、IR活動への意識を一層強く持つべきではないでしょうか。

SGIM 研究員 甲斐博樹

注)

*¹ 金融庁資料 「コーポレートガバナンス・コード原案」より

*² 同上資料より抜粋

*³ 同上資料より参照