加速するアクティビストの活動

投稿日: 2014年8月28日

アクティビストとは

株式市場におけるアクティビストとは、いわゆる「物言う投資家・株主」と同義であり、一定の株式保有を根拠として、企業に対し経営陣の交代や自社株買い、配当政策の変更等の企業経営改善の提案を積極的に行い、投資先企業の企業価値を向上させようとする投資家を意味します。米国等においては広く認められている投資の一手法に過ぎませんが、こと日本においてはかつての村上ファンドの様な敵対的なアクティビストのみがフォーカスされ過ぎた結果、ある種株式市場のヒールとしての側面が誇張され過ぎている傾向にあります。アクティビストといえば、もっぱら業績の低迷している企業に対して上記のような経営改善の提案を積極的に行うという印象がありますが、近年その傾向は変化しつつあるようです。

変化するアクティビストのターゲット

世界の投資家情報を提供しているIPREOでは、近年の海外アクティビスト投資家の動向についてのレポートを発行しており、アクティビストのターゲット対象の変化が報告されています。従来のイメージでは、アクティビストのターゲットは①キャッシュポジションが高い②配当性向が低い③自社株買いを積極的に行っていないといった企業・株主価値を十分に考慮していないという条件に合致する企業が主でした。しかしながらこのレポートでは、アクティビスト達が上記の様な株主価値の向上の対策に既に取り組んでいる企業に対しても積極的な経営改善要求をするようになってきている、と報告しています(下図参照)。これは海外アクティビスト達が、投資対象の裾野を広げてきていることを意味しています。

画像

日本に対する影響

日本株式市場における海外投資家のウェイトがますます増えている昨今の状況においては、海外のこうした流れが日本にもたらされるのは時間の問題です。アクティビスト達は、目当ての企業を見つければ従来よりもさらに積極的に株主提案を行ってくるでしょう。それだけではありません。今年2月に金融庁より発表されたスチュワードシップ・コードでは、企業価値向上のための企業と投資家との建設的な会話が求められています。いわばこれは投資家に対して企業への更なる積極的なアプローチを要請しているともいえます。また、4月にはGPIFにおける運用資産構成、運用委託機関の見直しも行われました。その中で、伝統的アクティブ運用においては「企業との対話により価値向上を目指す手法」を取り入れるとしています。これらを背景として、日本でもアクティブ投資家の活動は一層加速していくでしょう。

アクティブな姿勢の普遍化

このようにアクティビスト投資家の活動が増えていくと、自然と企業に対し様々な改善提案がなされることとなるでしょう。その際、アクティブ型投資を行わないその他の投資家たちはどうするでしょうか。同じ株主である以上、提案が合理的かつ株主・企業価値の向上に十分資するものであれば、それに賛同するのは当然のことです。また、先のスチュワードシップ・コードやGPIFの流れに後押しされ、アクティビスト以外の投資家たちも自ら積極的な対話を行うようになる可能性もあります。こうした流れが発展すると、いずれはアクティビストの姿勢が全ての投資家たちの中で普遍化し、投資家としての常識的な姿勢になるかもしれないのです。

好機か危機か

一見するとこうした状況は日本におけるアクティビストイコール敵対的という悪印象も相まって、企業にとっては危惧すべき事態と捉えることもできますが、一方でむしろこれはチャンスともなり得ます。アクティビストといっても、敵対的な投資家ばかりではなく、建設的な対話を求める友好的なアクティビスト(フレンドリー投資家)も存在し、その数も増えてきています。今までにも日本企業は、敵対的投資家に対しては買収防衛策の導入等を行うことで企業を守ってきました。しかしながらこれからは、スチュワードシップ・コードの導入等により従来のトレンドは変わり、むしろ友好的アクティビストと積極的な対話を行うことがスタンダードとなってきます。友好的なアクティビストからのアドバイスや事業拡大に向けた投資は、有効な資金調達手段となります。投資家との建設的な会話がなされれば、企業の継続的成長に寄与し、投資家や企業だけでなく他のステイクホルダーにも利益をもたらします。一方で高い保有率を背景に投資家の意見を唯々諾々と受けていれば、短期的な利益ばかりが優先して求められ、経営者の目指す中長期的な経営が出来なくなってしまいます。企業はこの状況をチャンスとみるならば、アクティビストに対しても広く門戸を開き建設的な対話を行うことで資金調達の手段とし、これを危機とみるならば、買収防衛策を講じる等してアクティビストの働きかけに対する具体的な防衛手段を検討すべきでしょう。但し、一般的に買収防衛策が海外投資家に対しては不評であることに留意すべきです。買収防衛策が単に現経営陣の保身のために活用されていると理解されれば当然賛同は得られません。買収防衛策を導入するにあたっては、あくまでも企業価値を守るために必要な理由とコーポレート・ガバナンス体制の充実が投資家への理解の前提となります。直近では、株式会社カプコンが今年6月の株主総会において買収防衛策を提示したものの、海外投資家のみならずスチュワードシップ・コード導入の影響による国内機関投資家の反対票も加わった結果として否決されるという事例も出てきています。来年は、国内でのコーポレート・ガバナンス・コードの導入も予定されているため、買収防衛策の更新はますます困難となってくることが予想されます。

この状況を好機とみるか、危機とみるか。その判断は各企業により異なるでしょうが、いずれにせよ最大の方策は自社の企業価値すなわちバリューを向上させていくことです。日本版スチュワードシップ・コード及びコーポレート・ガバナンス・コードの導入、アクティビスト株主の見解が及ぼす投資家への影響を考えると、企業サイドにはこれまで以上に戦略的なIRが必要となってくることは間違いない状況と言えます。

SGIM 研究員 甲斐博樹

参考元

IPREO Special Report “INVESTOR ACTIVISM