増加する海外投資家のニーズ

投稿日: 2014年7月1日

株式分布状況調査に見る外国人投資家の増加

2014年6月9日に東京証券取引所より平成25年度株式分布状況調査の調査結果が発表されました。公表された資料の中で注目すべき点は、平成25年度の外国法人等による株式保有割合が、過去最高を記録した前年度を2.8ポイント上回り、30.8%にまで上昇している点です。

図1 投資部門別株式保有比率の推移

図1 投資部門別株式保有比率の推移

~東京証券取引所資料「平成25 年度株式分布状況調査の調査結果について <要約版> 」より抜粋

図1を見ると、個人、金融機関及び事業法人が軒並み前年の割合を下回っているのとは対照的に、外国法人等による保有比率が大幅に上昇していることが分かります。もちろん、他の分布層がポイントを下げたことによる相対的な比率の上昇とも考えられますが、図2のように実際の取引における差引売買代金が前年度の約2倍となっていることから、外国人投資家による保有のウェイトが確実に増えていると捉えるべきでしょう。日本企業にとっては、国内のみならず海外についてもより一層充実したIR活動が必要となってくると考えられます。

年度 差引金額(億円) 年度 差引金額(億円)
2005 63,563 2010 65,996
2006 100,572 2011 39,821
2007 61,379 2012 2,062
2008 7,215 2013 52,843
2009 △42,214 2014 95,387

~データ 参照: 東京証券取引所資料「平成 25 年度株式分布状況調査の結果について <要約版 > 」

投資家への訴求力を高めるコーポレートアクセス

このように外国人投資家の日本株保有比率が増加するにつれ、外国人投資家が投資判断を行うために企業とどれほど有益なコンタクトをとれるかが一層重要になってきます。特に、企業経営層への直接の取材は、その企業の単なる業績だけに留まらない様々な情報を手に入れられるため、投資家にとって欠かすことのできない活動です。それは企業にとっても、自社の強みや戦略を投資家に理解してもらうチャンスでもあります。その際に最も重要なことは、企業が投資家に向けて直接連絡を取って対話を重ね、自らが主体的にIR活動を行うことであり、これは2014年2月に金融庁より発表された「日本版スチュワードシップ・コード」の趣旨にも合致しています。ただ、よほど海外に向けた発信力のある企業でない限り、企業側からの働きかけだけでは投資家への訴求力に限界が出てくる可能性があります。その場合は、企業と投資家の橋渡しを、コーポレートアクセスを業務とする第三者に依頼することで海外投資家との関係構築をサポートしてもらうという方法もあり、こうした手法は現在の日本企業においても幅広く採用されています。

企業と投資家の双方にとって有効な対話を

金融関係の情報を発表及び刊行している“Institutional Investor”は各種ランキングの発表も行っておりますが、その中で日本株リサーチランキングとコーポレートアクセスランキングを開示しており両ランキングともに日本の大手証券会社が上位を占めています。直近のコーポレートアクセスのランキングにおいては野村證券がNo.1に選ばれています。また、「日本において、投資家の企業に対する取材の需要は日増しに増えている。企業経営層に対する直接の取材は、数字だけでは窺い知れない企業の内側を知る上でとても重要である。また、取材をされる側にとっても、投資家の判断基準といった情報を得ることが出来るため重要である。」との記載が見られます。

外国人投資家は、企業との取材を通して日本企業の経営体質や特徴を理解し、更なる有効な投資を行います。一方で企業は、外国人投資家との取材を重ねることによって、自社が日本という枠組みだけでなく世界からどのように見られているのか、そしてどのような基準によって投資判断がなされているのかを知ることができます。また、自社の強みと戦略を投資家に伝えることもできます。このように企業と投資家の建設的で有益なコミュニケーションが活発になれば、企業価値は向上し投資家にとってのリターンも増えていくのではないでしょうか。その際に、コーポレートアクセスを業務とする第三者に依頼することで海外投資家との関係構築をサポートしてもらうこともひとつの手段として十分に検討の価値がありますが、やはり何より重要なのは企業が自ら主体となって積極的なIR活動を行っていくことです。

外国人保有比率の増加を背景に今後一層増加していくであろう外国人投資家と企業のエンゲージメントの中で、企業と投資家の新たな橋渡し及びコーポレートアクセスの拡大のために、SGIMにおいても引き続き投資家及び企業双方の利益に資するような活動及び情報提供を行ってまいります。

SGIM 事務局 研究員 甲斐博樹

参考元
Institutional Investor HP
東京証券取引所資料「平成25年度株式分布状況調査の調査結果について <要約版> 」