バークシャー・ハサウェイに学ぶ コーポレート・ガバナンス

投稿日: 2014年4月10日

ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイに学ぶコーポレート・ガバナンス

上場企業には守りと攻めのコーポレート・ガバナンスがある

 コーポレート・ガバナンス(企業統治)の本来の意味は、上場企業がとる株主価値である長期的な企業価値を上げ続けるための企業経営の仕組みである。企業規模が小さい間は、創業経営者の能力に基づき、企業内外のリスクを事前に認識し、それに対する機能的かつ迅速な対応と、強力な事業推進力による企業成長は可能である。しかし、上場企業という大きな組織においては、企業の不正防止・リスク対応という守りの側面を組織的に備えることに加え、競争力を維持・発展させ、更なる企業収益の拡大を図るための攻めの側面としての経営の仕組み=コーポレート・ガバナンスが重要となってくる。

守りのコーポレート・ガバナンスが意識され過ぎている

 コーポレート・ガバナンスは、株主に対する企業価値を拡大するための企業経営の仕組みであるが、日本においては、その国民性でもある慎重な性格から、企業経営陣にとってガバナンスが企業価値を毀損しない為の守りの仕組みとして理解され過ぎている傾向がある。これは、アメリカのエンロン事件や日本のオリンパス社の粉飾事件等のように、企業価値の毀損により株主や、ステイクホルダーである社員・取引先・債権者に多大な損失を与えた結果、株主代表訴訟を受けるというリスクが高まったことで、そのリスク面のみが強調されて理解されているためと思われる。
言うまでもなく企業の粉飾は違法であり、そこに加担、あるいはそれを看過し、保身に走る行為は、企業経営に密接に携わる役員・監査役・執行役員としての職務を逸脱する行為であり、本来の職務自体の理解が不足している、もしくは、それ以前の社会的な常識の欠如さえ疑いたくなる状況である。こうした状況は、株主から選任を受け経営受託を受けている役員や監査役しての職務権限と責任をそもそも理解していない人材を採用した人選のミスであり、更にはそうしたミスを生みだす人事権の仕組みの問題である。本来なら、上場企業のほとんどは、IPO時、上場審査時、また企業の歴史の中で構築できているはずである。

企業価値向上に向けた経営戦略としてコーポレート・ガバナンス構築を進めよう

コンプライアンス・不正防止等の内部統制に比重を傾け過ぎると、もう一方の本来の企業の目的である収益向上に向けた投資・リスクテイクのための経営判断が阻害または、抑制される側面も強くなってくる。こうした背景が、優良企業であるのに内部留保であるキャッシュを投資しきれていない要因の一つであるとも考えられる。そうした状況に陥らない為に、ここで改めてコーポレート・ガバナンスを企業価値向上に向けた経営戦略の一つと捉え、その為に社内外で想定されうるリスクに対するマネジメント体制を組織内に組込むという仕組み作りを、コーポレート・ガバナンスの改善ということで再認識しておきたい。

社外役員の登用、独立役員の登用等の本来の目的は、経営のチェック機能以上に企業価値を向上する経営判断を役員陣が果たしているかどうかを監督することである。単に上場を維持するためだけに証券取引所の指導に従い、形式的に独立社外役員を採用するというような消極的なガバナンス体制の構築ではなく、あくまで将来的に企業価値を拡大していくための経営戦略としてのコーポレート・ガバナンス構築を進めていくべきである。そうして更なる企業価値を追求する姿勢を対外的に示すことができれば、既存株主だけでなく、多くの機関投資家の投資意欲を掻き立てる企業へと成長して行くと思われる。

SGIM代表理事 甲斐昌樹

※下記に引用した、バークシャー・ハサウェイ社のコーポレート・ガバナンス・ガイドラインは、同社のホームページで誰でも閲覧できます。日本企業の経営陣の方々に是非とも読み込んでいただきたい、コーポレート・ガバナンスの優れた事例となっております。同社は、委員会設置会社であり、その多くが監査役会設置会社である日本企業とは制度の差はありますが、コーポレートガバンスの目的と、取締役としての資格・責任と評価並びに一般開示の透明性維持への姿勢は、日本企業経営陣の多くの方々に参考になると考えております。

引用
バークシャー・ハサウェイ社のコーポレート・ガバナンス・ガイドライン(引用:日本語)
“Berkshire Hathaway, Inc. Corporate Governance Guidelines”(引用元:英語)